こんにちは、となりの働くカイゼン部です。
皆さんの職場では、見積書や請求書、どうやって作っていますか? 営業担当がお客様とのやり取りの合間に、会計ソフトと格闘しながら一件一件手作り…。そんな光景、珍しくないかもしれません。
「この時間をもっと本業の営業活動に使えたら…」という思いから、私が入社して間もない頃に挑戦したのが、「Googleフォームで見積書作成を自動化する仕組みづくり」でした。
GAS初心者だった私が体当たりでシステムを作り上げ、そしてたった2ヶ月で運用廃止になってしまった、そんなちょっぴり苦くて、でも学びの多かった改善業務のリアルな話を包み隠さずお話ししたいと思います。
【課題】営業と事務の境界線で起きていたこと
私が入社する前、社内の見積書・請求書作成にはいくつかの課題があったそうです。
当時は、営業担当が直接「freee」という会計ソフトにログインして、見積書や請求書を作成していました。これにより、営業活動と並行して行う事務作業が大きな負担になっていたそうなのです。
営業未経験の私でも、
また、複数人が同じシステムを触ることで、管理が複雑になるという側面も。例えば、見積書と請求書の金額が一致しないといったヒューマンエラーが起きても、誰がいつ変更したのか追跡が難しく、原因究明に時間がかかってしまう…なんてこともあったようです。
【背景】「誰でも」「スマホで」見積書を作りたい!
そんな中、情報セキュリティの観点から「freeeにログインできる権限を大幅に制限する」という方針が決まりました。
これにより、営業担当は別の方法で見積書や申込書を作成する必要に迫られます。そこで、こんな要望が上がりました。
- 外出先でPCが開けなくても、社用携帯から簡単に見積書を作りたい
- 商品が多くて分かりにくいので、カテゴリーで商品を絞り込めるようにしてほしい
この「いつでもどこでも、誰でも間違えずに」という高いハードルを越えるため、白羽の矢が立ったのがGoogleフォームとスプレッドシートでした。
【やってみたこと】GAS初心者の1ヶ月にわたる挑戦
実を言うと、私はそれまで「見積書」というものに触れること自体が人生初。まずは自社の商品やお金の流れを把握するところからスタートしました。
要件に合わせて作ったシステムは、こんな感じです。
お客様の情報や見積書に記載する商品、数量、金額をフォームで選択。
商品数が多いこともあり、操作しやすいように設定していたら、フォームのセクションが85個になりました!
フォームの回答をスプレッドシートに自動で表示させます。
これはGoogleフォームの標準機能です。
スプレッドシート内にある見積書のひな形に、GAS(Google Apps Script)を使って情報を転記。
そのままPDFとして出力・保存する、という流れです。
ファイルの命名や見積書の管理番号も採番し、後から管理しやすくしました。
営業担当はGoogleフォームで聞かれたことにポチポチ入力するだけ。これで、あの面倒な作業から解放されるはずでした。
当時、jsを少しとC言語、HTML/CSSくらいの経験しかありませんでしたが、GAS教本1冊とネットの情報を頼りに、コーディングを進めました。
試行錯誤の末、完成までにおよそ1ヶ月がかかりました。
【社内の反応】「数秒の壁」とまさかのクレーム
完成した仕組みを営業担当に使ってもらうと、最初のうちは「おお、すごい!」「めっちゃ楽になった!」と新鮮さも相まって、とても良い反応が返ってきました。
「よっしゃ!」と心の中でガッツポーズをしたのも束の間、導入から1〜2週間が経つと、思わぬクレームが届くようになります。

Googleフォームを送信してから、PDFが出来上がるまで数秒待つのが地味にストレス…
GASの処理にはどうしても数秒〜十数秒の待機時間が発生します。
これが「数分かかるなら別の作業ができるけど、数秒だと何もできずに待つしかなくて逆に効率が悪い」とのことでした。
この「数秒の壁」は私にとって衝撃でした。
あれだけ面倒だった手作業がゼロになったのに、人は次の「もっと快適」を求めるのだと痛感した瞬間です。
そして、この「待機時間」という新たな課題が決め手となり、この仕組みは導入からわずか2ヶ月で運用廃止。会社は別のSaaSツールを導入することを決定しました。
【感想】この挑戦は、失敗だったのか?
あっけなく終わってしまった、私の初めての改善業務。これはただの失敗談だったのでしょうか?
私は、そうは思いませんでした。
まず、入社してすぐにこのような改善業務に挑戦させてもらえたことが、純粋に嬉しかったです。GASという新しいスキルを身につけ、システムやツールで課題を解決する面白さを改めて感じました。
そして何より、この施策が「うまくいかなかった」ことで、チームが本当に解決すべき課題がより明確になったのです。
「待機時間ゼロ」「もっと高度な連携」といった、次のツールを選定するための具体的な要件が洗い出され、会社全体のDX化を大きく前進させるきっかけになりました。
まとめ
今回は、私のちょっぴり苦い業務改善の体験談をお話ししました。
この経験から得られた最大の教訓は2つです。
- 初心者でも、本とネットがあればGASは意外となんとかなる!
- 改善において「数秒の待機時間」は、時として致命的なストレスになりうる。
たとえうまくいかなくても、挑戦した経験は必ず次の成功に繋がります。
この記事が、日々事務作業に追われ、何か解決策を探している方の、ほんの少しのヒントや勇気になれば嬉しいです。